2014年05月号 メールはアーカイブで片づく
時代はメッセージ
電子メールの使用頻度が下がり続けている。特定の相手とのやり取りは、ことごとくメッセージに移行したからだ。Macユーザー間なら「メッセージ」アプリで連絡するのが簡便で効率的。同じメッセージをiPhone/iPadでも同時に送受信できる。余計な挨拶が不要な分、シンプルで、経過が見やすく、メールのように連絡を見逃す危険も少ないため、安心感が高い。
少人数のグループでもメッセージが有用だ。大学内のプロジェクトに係わる6名の教員間で交わしていた意見交換をメールからメッセージに移行したところ、意見が数倍出るようになって議論が活発化し、進捗スピードが上がった。個々の発言が独立しているメールと異なり、メッセージのインターフェイスは会話を一連の文脈としてとらえやすい。個々人の見解の推移や人間関係が時系列に投影され、話の流れに乗りやすいのだろう。
Mac/iPhone/iPad以外のプラットフォームを使うユーザーとの間でも、メールよりメッセージを使う機会が増えている。Facebookのメッセージ、LINE、サイボウズLive、ChatWorkを筆頭に、WhatsApp、Threema、HipChat、Kik Messengerなど枚挙にいとまがない。
中でも使用頻度の高いFacebookメッセージは、そのURLをSafariのブックマークバーの左から2つ目に登録し、command+2でダイレクトに開く。仕事中にFacebookのタイムラインが目に入るのは避けたいから、メッセージ画面を直接開けるのがいい。またiPhone/iPadではFacebookメッセンジャーを利用している。メッセージ機能のみが独立しているので、Facebookの各コンテンツを見ずに済む。 サイボウズLiveとChatWorkはWebサービス型のメッセージ環境であり、SafariなどのWebブラウザとiPhone/iPadアプリの両方で使える。特に、サイボウズLiveは2月26日に大きな進化を遂げた。従来の「メッセージ」サービスを「チャット」がグレードアップされ、よりリアルタイム性の高い仕組みになった。以前から大学の業務やゼミの運営にサイボウズLiveを利用してきただけに、この改変はありがたい。サイボウズLiveで共有する資料などをめぐって比較的ゆっくりとした議論を交わすのと並行して、よりスピード感のある文字会話を同じサイト内で行える。
複数の通信環境を使い比べると、それぞれのサービス間で、コミュニケーションのスピードや相手との距離感に差があると感じる。Mac/iPhone/iPadのメッセージはもっとも相手と近く、次いでFacebookメッセージやLINE。サイボウズLiveのチャットやChatWorkが続く。それらに比べると、電子メールという通信手段は相手との距離がなんと遠いことだろう。
そう感じる原因としては、インターフェイスの違いもさることながら、仕組みの相違が大きい。メッセージやLINEのように、自分の発言を書いたあとダイレクトに相手まで届く仕組みの方が、相手と近い。一方、ChatWorkのようにブラウザ上でWebサイトに記入するインターフェイスは、相手に届くまでにワンクッションある感覚。FacebookメッセージはWebサイトで使う方式でありながら、iPhone/iPadアプリの方はダイレクト感があって、相手と距離感も中庸である。
メールはアーカイブですっきり
メッセージを上手に使うキーポイントは、ただひとつ。相手から即座に返信があると期待しないこと。受信したらすぐに返信すべし、という文化があると、ユーザーは疲弊してしまう。従って、メッセージを使い始めるときに相手との間で、「すぐに返信する必要なし。返信はいつでもOK」という「基本ルール」を決めておくのがいい。
このようにメッセージが連絡手段のメインになったとしても、メールとのつきあいは続く。その扱い方を効率化したい。
メッセージが連絡の中心となったいま、メールで送受信するのは、メッセージ以外の「その他」に位置づけられる。届くメールはWebサイトからの定期的なお知らせとか、新聞記事の見出しといった雑多なものがほとんど。その中に時として極めて重要な連絡が突然届く。いかにしてそれを見逃さず、見失わないようにするか。
そのための工夫が「アーカイブ」である。用済みのメールを「受信箱」から「書庫」に移管し、受信箱をきれいにしておくのだ。GmailにもMacのiCloudメールにもアーカイブ機能がある。
Macのメールアプリでは、各メールを選択した状態で、command+control+Aキーを打つ。「メッセージ」メニューから「アーカイブ」を選択しても可能だし、ツールバーをカスタマイズして「アーカイブ」ボタンを表示する方法もある。
読む必要ないメール、読み終わって自分がアクションする必要のないメールはすべてアーカイブしてしまう。するとそのメールは「アーカイブ」フォルダに移され、受信箱から消える。
その結果、受信箱には自分が返信する必要があるメールとか、何らかの作業を要する案件のみが残る。それらも返信し終えたり、作業を完了したらアーカイブ。受信箱はいつもすっきり空っぽで気持ちいい。
同じことはiPhone/iPadでも行える。メールアプリで「編集」をタップし、アーカイブしたいメールにマークをつけた後、「移動」をタップして「アーカイブ」フォルダーを選ぶ。また、個々のメールを左にスワイプして「その他」をタップし、「メッセージを移動…」から「アーカイブ」を選ぶこともできる。残念ながらMacと比べて操作手順が多いので、iPhone/iPadでは読むだけにしてMacでアーカイブする方が簡単だ。
こうしてアーカイブすると受信箱からは見えなくなるが、削除してしまうわけではないので必要なときにはいつでも取り出せる。検索すれば瞬時に現れるし、メールの表示で「スレッドにまとめる」を選択している場合、すでにアーカイブしてしまったメールに関連するメールが届くと、一連のメールが芋づる式に表示されて見やすい。
アーカイブとは別に、添付ファイル付きのメールだけをGmailからEvernoteに自動転送するよう設定している。Gmailのフィルターで「添付ファイル付き」のメールに対して、Evernoteアップロード用のメールアドレスへ自動転送を設定するだけだ。PDFが検索可能になったり、添付ファイルがサムネール表示されて見やすい。
「電子メール」というシステムは、20世紀中盤に開発されて以来、すでに半世紀が経過した。その間、ITの進化は著しい。メールとのつきあいは最小限にしたいものだ。